白虎はため息をつくと夢野に顔を近づけてこっそり聞いた。


「それってお前以外に知っている奴いるか?」


「い、いいいいいえ。私は生まれつき感知する力だけ特別あって、ドジで臆病なんですけどその力のおかげで里守見習いになれたようなもので」


白虎の顔が近すぎて夢野の心臓は破裂しそうに高鳴り、しどろもどろになって答えた。


里守の銀司と白虎といえば、里中の女子だけでなく若い男衆の憧れの的になっている。


粗野で悪っぽくて荒々しいけれど、物凄く強くて頼りになる男前の銀司


一方、幼いころより何をさせても天才的な能力を持ち、近づきがたいほどにクールで美男の白虎


女が集まれば必ずどちらが好みかという話で盛り上がる。


夢野も塁にたがわずその一人となり、白虎に密かに熱を上げて里守見習いに志願した。


訓練は想像していたよりずっと厳しく、全身傷だらけむち打ちだらけで床から出ることもできない日があり、何度も値を上げそうになった。


それでも、得意の能力でそっと白虎を見守ることができる喜びだけでここまで耐えてきた。


その憧れの的とはじめて言葉を交わし、手を伸ばせば届く距離にいるなんて。


夢野は宿舎での出来事が頭からすっぽ抜け夢心地を漂った。