「一年も勝手に里を出て行方をくらませていたあげく、戻ってきたら記憶喪失。挙句、腑抜けのまま里守復帰だって?!冗談じゃないよ」


「・・・一年」


そういわれても何も思い出せない。


自分は何をしにどこへ行っていたのだろう。


「ですが椿様、がぐやさんの復帰は里長が許可を出されています」


かぐやは最近自主訓練を再開し、箔先生の口添えもあって里守が復帰が許された。


それと同時に診療所を出て、里守の宿舎に戻ることになった。


女里守専用の宿舎に見習い里守の夢野がかぐやの案内を命ぜられていた。


「里守も何考えているのかしら。こんな半人の好き勝手を許した挙句、再び里に置くなんて」


「あたいらはあんたがいなくなってせいせいしていたんだ。里を出たなら帰ってくるな!」


本当にどこへ行っても悪態を吐かれる。


「それで、私はどこを使ったらいいの?」


「はい、元々使われていた角の個室を使用していただければとのことです」


自分に向けられたものではないにしろ、女里守の悪態に恐れをなして縮こまりっきりの夢野が慌ててかぐやを連れてい行こうとした。


「そこは、加古が使ってるよ。戻るなら大部屋だね」


「えぇー、椿それは無理だよ。半人と一緒じゃあたいたちがいられないよ」


「かぐやは縁の下か厩に行けばいいさ。きゃはは!」


「あの・・・かぐやさんは隊長なので個室を・・・きゃっ」


「あんたは見習いの仕事にさっさと戻りな!」


「夢野はしりもちをつくと、そのまま転がるように走り去った」