『ふぅむ、おそらく魔物の攻撃が元となった記憶喪失ってとこかな』


『それで、かぐやの記憶は戻るのかよ』


『外傷も擦り傷と打ち身程度、内臓もしっかり機能しているところをみると一過性でしょう』


『じゃあ記憶はすぐ戻るんだな!』


『銀士君、婚約者がこのようなことになって焦る気もわかりますが、いつ記憶が戻るかは誰にもわかりません』


『だぁー!はっきりしねぇなーって、おい!まだかぐやと俺は正式には婚約してねぇよ。親父が勝手にその・・・勝手にだなぁ』


『銀司、騒ぐな』


『なんだと白虎!おっおい』


おそらく私のことをあれこれと話していた三人は、一斉に私を見て押し黙った。


ここがどこなのか、自分は誰なのか、何も思い出せない。


目の前の人たちのことも。


涙が頬に伝わった。


何か大切なことがあったのに、それが何だったのか思い出せず、ただ心に大きな穴が開いた虚しさに打ちひしがれた。


「心配するな。お前には俺がいる」


そう言って銀司がぎゅっと肩を抱きよせた。


懐かしい声、力強い言葉、安心できる。


身を任せて嗚咽をもらした。


しかし、忘れてしまった大切な何かは思い出せないままだった。