たん、たん、たん、、たんたんたん、、、、
ボールが地面に跳ね、国道の中に吸い込まれていく。
「あ、」
僕はボールを見つめ一瞬、止まったあとすぐに子供の方に目をやる。
こういうときの嫌な予感というのはなんでこんなにも当たるんだろうか。
幸せな予感は当たったことなんてないのに。
ボールに導かれるように、ニコニコしたまま車が行き交う国道に子供が吸い込まれていく。
ボールが片側三車線の一番奥の斜線まで到達しようとしたところで、クラクションの音とともに車に弾かれまた空へと飛んでいく。
そしてまたクラクションが耳を突き刺すように響く、その向こう30m程のところにトラックが見える。
ああ、どうして僕が大事にしたいものは全てこうなんだろうか。
ポチを半ば投げるに近い形で地面に置き、かつて無いほど僕は地面を踏み込んだ。
まだ間に合う。
どこかで見たことある通りだ。
こういう危機のときにヒトは周りがスローモーションに見え一瞬にして状況を飲み込む力があるのだと。
通行人は皆固まり、目が飛び出そうなほど道路を見つめ、子供の母は走り出そうとしたのだろうか、身体は前に向かっているが腰を抜かし倒れかかっている。
子供はトラックに気づいていない。
その間も耳を裂く、割れるようなクラクションが鳴り響く。