いつもの下り坂。
ポチは僕に抱かれていた。
前に外に連れ出したときはキョロキョロしていたけど今日はやけにおとなしい。
以前雨の日に脱走したときに街を歩きまわったから覚えたのだろうか。
初夏の爽やかな香りが僕の花をくすぐる。
ポチの鼻もヒクヒクと動いている。
一人と一匹
同じものを感じている。
そうじゃないかもしれない。
そうかもしれない。
言葉はポチとは通わないけど、でも多分同じものを感じてる。
少し暖かいポチの身体は生きてるんだと、小さな命を感じさせる。
子供を抱いているようだ。
僕は素敵なお父さんになれるかな。
いつかこうして我が子を抱けるのかな。
ポチ、どう思う?
坂の下、国道に近付いてくると僕は見覚えがある親子を見つけた。