「店長、家族っていいですね」
店長を黙って僕の肩をポンポンと二回叩いた。
僕には小さい頃の自分の写真を見た覚えがない。とられた覚えもない。
どんな表情をしていたんだろうか。
だからあの子は幸せなんだなと思う。
安心して母に手を引かれていた。
食卓ではどんな会話が飛び交うのか。
わからない。
僕には幸せな家庭がわからない。だから僕にとって幸せとは理想で空想。
でもあの写真をみて不幸だと思うひとは恐らくいない。
それが本当の「幸せ」なんだと思う。
あの子には僕のようじゃなく、素敵な大人になってほしい。
帰り道。
今日の親子のことを考えていた。
家族。
僕もいつか子供を持つときがあるのか。
そういえば最近ケータイでポチとトランプしか写真を撮ってあげてないな。
そうだ。
お金も少したまってきたし今度の週末カメラでも買ってみようかな。
そう思いながら家に帰った。
「ただいま。ポチ」
「ニャ」