それからポチを見つける事はできなかった。





やっと出逢えた、僕の唯一の家族が幻のように消えた。

止むことのない雨が僕を打ち付け僕の背中をいっそう小さくする。










また僕は一人になったのか。




一瞬の夢だったのか。

初めてポチが来た日を思い出す。






なんだか僕と同じ目をしていた一匹の猫に感情移入したあの日。






ポチがいなかったら僕はずっと一人、ただ生きるだけの人間だったのだろう。



そういえば今日は僕の誕生日だったね。

プレゼントは愚か、僕のものから一番大切だと思ったものが消えた。

21歳の誕生日だった。








また込み上げるものがあった。















アパートの階段を登りいつもは響く僕の足音も今日は雨の音に書き消される。



ずぶ濡れのまま玄関を開けて家にはいった。













この部屋も今日からまた一人なんだね。