あれから毎日「僕」は僕に挨拶をしてくれる。

「おはよう」



僕も返す。
でも僕の声は「おはよう」とは言えずに
「ニヤッ」とでる。









今日も「僕」は仕事に向かっていった。
最近の「僕」は心なしか表情が柔らかい。

仕事も昔より楽しんでいるみたいだった。






僕は「僕」の帰りを待つ。

猫というのは退屈なものだった。




とくにやることもない。



とくに人間の自由さを知っている僕にとっては本当にどうこの一日を過ごせばいいのか悩んだ。



ひとつだけ、人間では体験することはなかったであろう事があった。







身体能力だった。


自分の身体の何倍もの高さをジャンプで登れたり、すごいスピードで走れたり。


それは少し楽しかった。





狂ったように僕は暇をもて余すと走り回っていた。








今日も「僕」は帰ってきた。


僕は「ニャッ」という言葉で迎える。