30分経過──。
遅ぇ…!
なにしてんだよ…。
車の中でイラつく俺に、運転手は「お帰りになられますか?」と聞いた。
あぁ、すっげー帰りたい。
なんせ、ゲーセン前にリムジンだぞ?
目立ちすぎにも程がある。
てゆうか、和風の家にリムジン持ちって親父、矛盾しすぎだろ?
リムジン買うなら、さっさとクーラーつければいいのによ。
「あの、勇太様?」
運転手は振り返る。
あー、また違うこと考えちまった。
えーと、すげぇ帰りたいが。
「もうちょい待つ。」と答えると、運転手はコク、と頷き前を向いた。
若者の男女がリムジンを、パシャリと撮ってゆく。
こういうこと、犯罪にならねぇの?
ウザイし。
「なあ、場所移動してくれ。」
運転手はまた、後ろを振り返ると
「どちらまで?」
無表情で頷いた。
「ゲーセンの近くになんかねぇの?」
「駐車場ならありますが…有料な上、リムジンが余計に目立つかと。」
「なぜに」
「噂によりますと、ここ辺りの土地主がリムジンオタクらしく、一気にネット上で拡散され、オタクが集まり、帰るに帰れなかったと。」
常に無表情な運転手の噂話は、ホラー話を聞いてるかのようだ。
ある意味ホラーだけどさ。
「そ、そうか。」
「どういたしましょうか。」


