楽しそうに話す水嶋とは裏腹に、早鐘をつくように高鳴る心臓は少しも治まってくれそうにはない。
水嶋が、美月のことを見たことがあるって?
一体、どこで?どうして、美月を。
「あの頃の面影は、もう殆ど無いから……最初は全然わかんなかったんだけど。でも、あの名前と笑顔、間違いないよ」
だけど俺はきっと、見逃していた。
あいつが零した、ほんの少しのミスを。
いつだって自分を隠して笑う美月の、隠しきれなかった嘘の欠片を。
――――初めて、あいつを抱き上げた時に見た、目の下に薄っすらと散る、そばかす。
――――そうそう、プール周りはこまめに草むしりしないと、あっという間に草ボーボーになるから。
――――体内にある抗体が一定量を超えた時に、突然なっちゃう人がいるんだって。
――――すごい、綺麗なフォームで見惚れちゃったよ。
――――水を掴む感覚を、日下部くんの身体が知っていて。もっと泳ぎたい……って、全身で言ってるみたいだった。
馬鹿なくらい真っ直ぐなくせに、自分を隠して笑う美月の、もう一つの秘密を。