『―――――みつ、き!―――…っ、と、みつ』
「……っ、」
落とした携帯から、私を呼ぶミドリの声が聞こえたけれど、今はもうそれどころじゃない。
……日下部くん。
プールサイドに立ち、青い空を真っ直ぐに見上げた日下部くんは、勝利の声を聞いた瞬間、その拳を高々と太陽に向かって突き上げた。
その姿は、つい昨日までクールで冷たいと言われていた日下部くんの姿とは、まるで正反対で。
太陽のように熱く、全身で泳ぐことの喜びと、クラスの勝利を喜んでいる姿はきっと――――日下部くんの、本当の姿なのだろう。
彼のそのギャップに、今頃、彼を見ている人たち全員が目を……心を、奪われているはずだ。
だけど、きっと。
今日まで、そんな自分を抑えて苦しんでいた彼こそ。
ようやく自分を取り戻して、自分の場所へと帰ってきた日下部くんこそ。
誰よりも、そんな自分を待ち望んでいたのは、日下部くん自身だと思う。



