『っ、ちょっと……っ!ちょっと、美月、さっきから聞いてる!?陽くんが水泳に出てて、とんでもなく速くて、しかも髪が黒くなってんの!!』
「……っ、き、聞いてるっ」
聞こえてる、全部、全部、聞こえてる。
ミドリの、焦ったような……驚いたような、声も。
日下部くんの名前を呼ぶ、空気を震わせるような歓声も。
日下部くんのことを、ずっと待っていた―――水の、音も。
全部聞こえてるから、私は涙が溢れて止まらないんだ。
――――優勝は、2−B!!
そんな、私たちのクラスの勝利を告げる声も風に乗って聞こえて。
それを聞いた瞬間、私は耳に当てていた携帯電話を教室の床に落として、空いた両手で顔を覆い、子供のように声を上げて泣いた。



