「私は……日下部くんが言う、本当の日下部くんのことを、もっと知りたい」


「っ、」



―――情けない俺のことなんて、知らないから。

―――どうしようもない、本当の俺のことなんて知らないから。


お願いだから、そんな風に自分を蔑まないで。


弱い日下部くんも、過去に苦しむ日下部くんも、私はきっと、どんな日下部くんのことも――――



「…………もう、嘘は、やめよう?」


「……は?」


「もう、自分や周りに嘘を吐くのは、やめよう」



ハッキリと、夜の闇に通る声でそう告げた私はプールサイドに立って前屈みになると、日下部くんに手を伸ばした。