相変わらず笑顔で俺に問いかける美月の言葉に、思わず目を見開いた。


大切だから、一人にしてくれた?

一人で考える時間をくれた?

向き合うための時間をくれた?

俺を信じることに決めた?



「水泳部のみんなは、日下部くんならきっと乗り越えて、また戻ってきてくれるはずだと信じてたんだよ」


「……っ、」


「だから、もし、日下部くんが反省して後悔するところがあるとしたなら、それは大会で怪我をして試合に負けて……みんなに迷惑を掛けたことじゃない」



美月の黒髪が揺れ、再び風が吹いて、プールを囲んだフェンスを揺らす。


――――俺が、本当に後悔するべきことは、



「日下部くんが水泳部に帰ってくることを信じて、待ち続けてくれたみんなの気持ちに、気付かなかったことだよ」