誰もいなくなった教室で一人、辺りを見渡した。 そして何を言葉にするでもなく、そのまま真っ直ぐに歩を進めたのは、窓際の一番前の席。 日下部くんの、住処(すみか)だ。 音もなく椅子を引き腰を下ろせば、何故か喉の奥が熱くなって。 日下部くんがいつも見ている景色は、涙で滲んで見えなくなった。 はちみつ色に揺れる髪も。 いつも無防備に投げ出された足も。 二重瞼の黒目がちな瞳も。 気怠そうに外を眺める背中も。 その全てが彼と初めて話した以前よりも遥か遠くに感じて、胸が締め付けられたように痛んだ。