「……もう、いいから。早く作業終わらせよう」


「え……う、うん……」



今は、放課後。

日下部くんの言葉に改めて見た、窓の外に広がる空は茜色に染まっていて……


空と建物の境界線は、夜を知らせるブラウンを滲ませていた。


それに何故か無性に寂しさを感じた私は、向けられた背中にあの日……日下部くんが見せた苦しそうな表情と声を、思い出して。



……ねぇ、日下部くん。

日下部くんは、どうしてあの時、あんなに悲しそうな顔をしたの?


作業をしながら、どこか遠くを眺めている時も……


教室でも、窓の外を眺めながら……本当は、いつもそこから見える青い水面(みなも)を見ていたの?


ゆらゆらと、心を揺らす。


日下部くんの過去に繋がるプールを、眺めていたの?