「……なんで、なんでだよっ!お前、あんなに水泳が好きだったじゃんかっ!!それなのに……未だに、過去に縛られてんのかよっ!!ふざけんなよ……っ!!」


「っ、」


「また、逃げんのか!?あの時みたいに――――あの夏みたいに、また、俺たちから逃げるのかよ!?」



ただ……一つだけ、わかったことがある。

わかってしまった、ことがあった。



「ふざけんなよ、日下部……っ!!」


――――“誰も。本当の俺なんか見てない”



あの日、息をすることさえ苦しそうに吐き出されたその言葉の意味。


どうして日下部くんが、そんなことを言ったのか。




「……っ、なんで、今更」




雲一つない青空に、燦々と降り注ぐ夏の陽射し。


今年の夏の、追いかけてくるような暑さから逃れることは、この太陽の下にいる限り許されなかった。