「行くぞ」
「え……。あ……た、高橋くんっ!本当に、ごめんね……っ」
そのまま再び痛いくらいの力で手を引かれ、強引にその場から引き離された。
去り際に、高橋くんに向けてそんな言葉を残すことが精一杯で。
それに答えるように切なげに微笑んだ高橋くんが視界に写った瞬間、もう一度心の中で「ごめんなさい」と言葉を送った。
――――次から次へと打ち上がり、夜空を彩る花火たち。
けれどそれにも一切目もくれず、つい先程通った人混みを掻き分けて、足早に進んでいく日下部くんは、何かを話す様子もなくて。
日下部くん……
心の中で、その名前を呼んでも日下部くんが振り向いてくれる気配はない。
そうして、ようやく足が止まった時には辺りは静けさに包まれていて、すぐ近くに感じるのは夜空に打ち上がる大きな花火の音だけ。
その花火に歓声をあげる人達の声は遠く、忘れ物のように置き去りにされていた。



