だけど、そんな白坂さんはいつだって真っ直ぐに“彼”だけを見ていた。
相変わらずフェンスに背中を預けたまま、眉間にシワを寄せて人混みを眺めている―――“彼”。
「え、と……陽、くん。来てくれたんだね?」
「……仕方なく」
「そ……そっか。あの………どう、かな?私……浴衣、似合う……かな?」
「……フツー」
「っ!」
ちょちょちょちょちょ、ちょっと……!!
想い人、日下部くんを見て頬を染めた彼女を見もせずに、“フツー”とだけ感情の篭ってない声で言い捨てた日下部くんに、背中に冷や汗が伝った。
この、ミスタークールガイに「似合う?」なんて聞けちゃう白坂さんの度胸も凄いけど。
さすがに!さすがに、それはないよ日下部くん!
ほら、現に。途端、白坂さんの瞳に溜まった涙が、今にも溢れ出しそうだ。



