「っ、」



顔を上げた先。日下部くんの、冷たく射抜くような視線と視線がぶつかって、一瞬世界の音が消えた気がした。


開けた窓から流れ込んだ風が私の長い黒髪を揺らして、頬をなぶる。


さっきまで、うるさいくらいに聞こえていた蝉の声も、今は不思議なほど消えていて。



部活動に賑わうグラウンドの声も。

吹奏楽部の練習の音も。

学校のすぐ横を走る車の音も。



全ての音が切り離されて、教室という小さな世界に閉じ込められたような気がした。



「アイツのことは、好きじゃないから断った。それに――――」