「あー、なんか、こういうことするのも久しぶり。でもまぁ、案外やってみたら楽しいかもな」
私から奪った筆をアーチの一部へと滑らせながら、日下部くんは黙々と作業を進めていく。
――――“ ミツキちゃんは気付いてないんだよ ”
そんな日下部くんを眺めながら、私は心の中で自問自答を繰り返していた。
「真面目に作業進めとけば、夏休み全部無駄にしなくても出来そうだな」
こんな風に、当たり前のように言葉を投げてくれる日下部くんを、他の人は知らないんだろうか。
……本当に、日下部くんは私にだけ優しいの?
本当に付き合っているわけじゃない。私は、ただの偽彼女なんだよね?
だから、私が白坂さんに言ったとおり……
日下部くんは、守ると約束してくれた責任感と使命感で、仕方なく私に優しくしてくれてるんだよね?



