カインさんはうつむき、苦しそうです。
その時のことを思い出しているのでしょう。
「そんな俺を救ってくれたのがヴィルだった。」
「え?」
「海に飛び込んで死のうとしてた俺を捕まえて陸にあげて、アイツは俺に怒鳴ったよ。
“自殺なんて世界で最も面倒くさいこと考えてんじゃねぇ!”
って。」
カインさんは、クスクスと笑いました。
「びっくりしたよ。赤の他人なのに濡れるのも構わず海に飛び込んできて、挙句の果てに怒鳴るなんて
その時俺、何もかもがどうでも良かったからヴィルと浜辺で口喧嘩したよ。
俺には家族も友人もいない、死んだって誰も悲しまない、生きてる価値なんてないって、泣き叫んだよ。
そしたら、アイツなんて言ったと思う?」
なんとなく、わかる気がしました。
ヴィルさんなら、きっとこう言ったはずです。



