「落ち着いた?」
「はい、すみません…」
ベンチに腰掛けてグズグズと鼻をすする私にカインさんが言いました。
「なんで泣いてたんだ?何があったのか?」
思い出すだけでも涙が浮かんできます。
「ヴィ、ヴィルさんが…」
私は涙声のまま、カインさんに先ほどのことを話します。
………
……
…
「なるほどね、アイツらしいや」
とカインさんは笑いました。
「笑い事じゃありません!あの人は人を思いやる心というものを持ってませんよ!!
確かに私が言ってることも綺麗事かもしれません。
でも、ヴィルさんが言ってることだって綺麗事じゃないですか!!
この村さえあればいい、なんて…。
世界統一が進めば、この村だってどうなるのか分からないっていうのに!!」
何故か凄く腹がたちます。
「この村がなくなるのはやだなぁ」
カインさんがハハッと苦笑いしながら言います。
「あ、すみません。つい…。」
私はなんて馬鹿なのでしょう。
こんな簡単なことに気づかないなんて…。
カインさんがそうである様に、ヴィルさんだってこの村の住人なのです。
“この村さえあればいい”そんなの村の人にとって普通の考えではありませんか。