放課後になり、あたしは18時に幸希が来るまで学校で勉強しながら暇つぶししてた。


1人の放課後の教室って静かだよなあ



音楽を聴きながら教室で1人で勉強するのスキ。
あたしは結構、人混みが嫌いだから静かなところとかが好きだ。


昔は、あたしが人混みが嫌いなのを知ってた一樹はよく遊ぶ場所を近くの賑やかな公園じゃなくて、あまり人が来ない少し遠い公園にわざわざ連れてってくれた。


そんな昔のことを思い出してると、




ガタンッ


イヤホンをしてるのに聞こえた大きな音を聞いて後ろを振り返ると、廊下で一樹がたくさん持ってた野球道具を落としてた。



ここは無視するべきか?

助けるべき?

でもいま、避けられてるんだよ?

行ってもいいの?


ああー、なんでこんなアイツのために考えてんだろ。

助けよ。


あたしは教室のドアを開けて落ちてた野球ボールを拾った。


「瑠衣…」

あたしの存在に気づいた一樹は目を見開いてこちらを見た。

「はい、ボール」

ボールを拾って一樹に差し出すと、不機嫌な顔をした。


「なんでここいんだよ」

「え、だめ?」

「別に。でも教室電気付いてねーし、幽霊かと思った」

「こんな美少女が教室から出てきて嬉しかったっしょ?」

「バカじゃねーの?全然」

「なーんだ!で、一樹なにしてんの?」

「今日はグランド使えねーから筋トレしてもう終わりなんだよ」

「あ、そっか今日火曜だもんね」

火曜はサッカー部がグランド貸し切りだから野球部は使えないんだ。


他にも落ちてたものを手伝いながら喧嘩してたのが嘘のように前みたいに話ができていた。

「あのさ、」

「ん?」

「お前、高山のこと好きなわけ?」

一樹が拾う手を止めてあたしを真っ直ぐ見ながら言った。

「さあ?」

「ふーん」

「なんでよ?」

「お前にはあいつと付き合ってほしくないから」

「はあ〜?あたし、遊ばれるんでしょ?そんな心配する必要ないじゃん」

「悪かったよ、うそだよ」

「いいよ、いいよ、あたし莉子ちゃんみたいに女の子っぽくないし」

「俺には、お前の方が前田より可愛いぞ」


一樹は、平気で真面目な顔で言うんだ。



「な、なに言ってんの?頭おかしーんじゃないの?」

「かもな」


そう言って微笑む一樹を不覚にもかっこいいと感じてしまった。

本当にこいつは…

「一樹はずるいよ」

「え?」

「平気で真面目な顔して言ったり、ふざけたりあたしのこと振り回しすぎでしょ」


「俺の方がお前に振り回されてるよ」


そういう一樹は切ない顔をしていて、なぜだかあたしは胸が苦しくなった。


「あ!今何時?」

「18時5分」

「やっば!!幸希と約束してんだった!」

あたしは急いで準備してカバンを取って教室を出ようとした時、あたしの腕を一樹が掴んだ。


「ん?」

あたしが問いかけても一樹はなかなか離さない。

「どうしたの?」

「俺も行く。」

「え?いくの?」

「だめかよ」

「いや、いいけど、初対面だよね?大丈夫?」

「俺がいいっつってんだよ。これ片付けてくるから待ってろ」

「あ、うん。じゃあ門の前で待ってるね」


なんなんだ?全く。



門の前にはすでに人影があって、携帯をいじる彼を、身長も大きくて、顔もかっこいいから帰る女子高生にチラチラ見られてた。



目立ってるよ…


あたしを見ると幸希は笑顔になって手をあげた。


「瑠衣ちゃん」

「遅れてごめんね」

「いや、大丈夫だよじゃあ行こうか」

「あ、あのさ…」

「ん?いや、その…」

「俺も行くから」


後ろから聞き覚えある声が聞こえて振り向くとエナメルを持って、若干不機嫌そうな一樹がいた。


「あー。相川一樹くんだね」

幸希は笑顔で一樹に挨拶していて。


「なんで、一樹のこと知ってんの?初対面だよね?」

「ううん、俺と相川くんは国体でも同じだったからね」

「え、そうなの?なーんだ」

「で、なんで相川くんがいるのかな?」

「あ、なんか一樹も一緒に行きたいらしい」

「あー…なるほどね〜…いいよ、ちょうどお腹空いてたし、ファミレス行こうか」

「はーい!!」




そうして、あたしと一樹と幸希という謎のメンバーの食事会が始まった。