「高山 幸希。桜ヶ丘学園の。」

あたしがその名前を出すと、美優が驚いた顔をした。


「瑠衣、高山幸希と友達なの?」

「え、う、うん」

「ねーねー、聞いてよ。渡辺!」

「あ?」

美優の前の席の、渡辺 透くん。

透くんは、一樹の野球部の友達で、いつも一緒にいる。

「瑠衣、桜ヶ丘学園の高山幸希と友達なんだって!!しかも、LINEしてるんだよ〜!」

美優が、透くんに言うと、寝ぼけてた透くんもびっくりした顔であたしを見た。


「それまじか?」

「え、う、うん。てかなに?幸希って有名なの?」

「瑠衣知らないの〜?高山幸希って、今年の最優秀注目選手だよ〜?しかもイケメンじゃん?だからすんごい女子から人気があって、追っかけとか、ファンクラブまであるみたい。でも、彼女は作ったことなくて、告白されても”俺、俺に興味がない子がいいんだ”とか言って断るらしいし?女の子とも喋りかけられる以外は話さないし、連絡先も教えないっていう強敵なんだよ〜?」


「うえ?それ本当?普通に友達なんだけど」

「お前、すげーな!!男の俺でもあれはかっけーと思うぞ?一樹の次に。」

それまで話に入って来なかった一樹がこちらを向いて、透くんを睨んだ。


「なんだよ、睨むなよこえーから。せっかくのイケメンが台無しだぞ。」

「うっせえよ。」

透くんに言ったあと、あたしの方を見て、冷めた目をしながらこう言った。


「お前、遊ばれてんじゃね?お前みたいなブス相手なんかされねーよせいぜい泣かされて終わるだけだぜ」

一樹はそれだけ言って、前を向いた。


「は?違いますー!!一樹と違って優しいし?紳士だし?はっ!ぜんぜん違うわ〜」

「てんめっ」

一樹がまたあたしの方を振り返ってなんか言おうとした時、

「はーい、ストップー!!」

美優が止めてきた。

「まあまあ、瑠衣は、きちんとデートに行って、楽しんでくれば〜?」

「そうする〜」

一樹を睨みながら、携帯をピコピコといじって幸希に返信した。


『いいよ』


するとまたすぐに返信がきた。


『良かったあ〜断られるかと思った』
『じゃあ、18時に瑠衣ちゃんの学校の最寄駅の改札前で待ってるね』


ふーんだ!!

一樹になんか、関係ないもんねーだ!