小さな公園の敷地内に入るとポツンと一つだけ、ベンチがあるのを見つけた。
俺の腕を引っ張っていく女は、そのベンチに向かって歩く。
ドスン…、
と音をたてながらベンチに座った女は俺の腕を離すと、自分の隣をポンポン叩いた。
ベンチに座れと言ってるのだろう…。
口で言えよ---
そう思ったけど口には出さず、女の隣を一人分空けて座った。
「ね、ビールとサワーどっち飲む?」
この人、俺が学生服着てるの気付いてねぇの?
…と思ったが、いちいちその事を指摘すんのも面倒だから言うのは止めた。
大体、この人に付き合うとも言ってないのに何で物事を勝手に進めて行くんだ?
しかしそう言ったところできっとこの女は俺の事なんて聞く耳持たねぇだろうな…と内心諦め、溜息をはいた。
「すみません俺、お茶とかでいいです」
瞬間、俺を睨みつけてきたお姉さん。
気に入らない事があるとすぐ睨み付けてくるのは、この女のクセなんだろうか?
いい加減止めた方がいいのでは?と思う。
大人なんだから---
「ちょっとくらい付き合いなさいよっ!」
「俺、未成年なんで結構です」
目を丸くして驚いているお姉さんに、俺も驚た。
当たり前の事を言ってるのに何故、驚くのか?と---
「貴方って見かけ通り、かったーいのねっ。高校生でしょ?私、そのくらいからお酒飲んでたわよ」
「そうですか…、そんな事を言うのならもう帰ります」
そう言って、俺は椅子から立ち上がる。
しかしその女は、素早く俺の腕を掴むとまた座らせた。



