ここは二階だが、私は窓から飛び出した。


逃げて、逃げて、逃げて。



裸足で逃げた。



小石が素足に食い込んで、痛い。



足元でジュっと音がした。燃えかけの煙草の吸殻が、踵に火傷を作った。




何もかも捨てて、楽になってしまえたら。







―私は、何処へ向かっているのだろう。





帰る場所なんて、何処にも無いのに―





ジ、ジジと消えかけの電灯がチラチラしてる。




寂れた駅の、プラットフォーム...。




黒ずんで汚れたベンチに腰掛ける。




一晩が過ぎた。




目覚めたのは夕方だった。




一体何時間眠っていたのだろう。





誰も居ないはずだけど、背後に気配を感じた。