「さあ行くぞ」


水が強引に私の腕をつかんだその時!




「お…お待ちになって!」





どこからか,澄んだ声がした。




振り向くと,目を見張るような立派な黒翼を広げ,こちらを見つめる女性が居た。

やわらかなウェーブの髪もロリータの様な服も真っ黒だが,肌は白,瞳は赤い色をしている。



端正な顔立ちと声色からは,まるで天使の様だ。
少なくとも横に居るコイツよりは。





彼女は大きな丸い目を見開き,ビクビクと怯えながらも左手をこちらに突き出して言う。




「…え,えっと,取り合えず…痛そうだから手をお離しになってあげて!」