アルコールもまわり、どちらともなくくちびるを合わせた。何度も何度も。そして近くのホテルに入り、肌を合わせた。今までで一番幸せな時間だと、彼女のことを離すもんかと思った。しかし朝起きると隣に彼女はいなかったのだ。残されていたのは『ごめんなさい』と書かれたメモと彼女のハンカチだけ。
バーは薄暗く俺のことに気づかなくても朝になれば気づかれるかもしれないと思っていた俺はあらかじめ彼女のバックから名刺を一枚抜いておいたため、二度と会えないわけではないことにホッとする。

だが今日からツアーが始まるためリハや準備で忙しく連絡する暇もないまま、気づけばツアーは最終日を迎えていた。