いつだったか「運命って信じる?」と聞かれたことがある。その時俺は、運命なんてくだらない、いい大人がそんな夢なんて見たって仕方ない。と答えた気がする。ただ、たったいまその答えを覆す出会いをしてしまった。


仕事に追われ、いつものようにこのバーにやって来た。キャパオーバーになったときは必ずこのバーに来て気持ちを切り替えてる。マスターとは昔からの知り合いで、店もこじんまりとしていて俺みたいなやつがこっそり来るには都合のいい場所だ。

「こんばんは、マスター。」

「透か、おつかれさん。いつものでいいか?」

その言葉に無言で頷きながらカウンターの左端の席に着く。ふと隣を見ると女性が一人。その瞬間息が止まるような感覚になった。言い回しは古いが、ビビッとくる感覚ってこういうものなのかもしれないと思った。

「お一人ですか?」

こんなこと今までになかった。アイドルという華やかな仕事をしているが、ナンパなんてしたこともないし声をかけてきても一夜限りなんてことは絶対にない。それなのに、見た瞬間から目が離せなくて気づいたら声かけてるのだから。