私とアッキーは顔を見合わせた。


そして、硬くて重たいエレベーターの扉が開いた。


扉が完全に開ききらないとき、扉と扉の間をすり抜けるように。


誰かがエレベーターの中に飛び込んできた。


そしてギュッと私に抱きついた。


ひんやりした肌に、良く知ってるシャンプーの匂い。


「夏樹…」


私がそう無意識に呼ぶと。


私を抱きしめている夏樹の手にもっと力がこもった。


そして私の肩に押し付けているせいでこもった声で、夏樹は言った。


「心配した」


その言葉を聞いただけで、心臓がギュッと痛くなった。


私はチラッと横のアッキーを見た。


アッキーはイタズラが成功したときのような、少しだけ悪そうな顔で嬉しそうに笑っていた。


ああ…。


私もニコッと笑った。


松崎くん。


あのとき助けてくれたのはおじさんだったけど、今回は夏樹が助けてくれたよ。


「心配かけてごめん、夏樹」


夏樹。


今は夏樹を抱きしめ返せれない、ダメな私だけど。


いつか絶対に、私から抱きしめるから。


絶対、絶対、絶対に。


だから今度は、夏樹が期待してて。


今までの私みたいに。