アサガオを君へ

夏樹はそらした視線を、下に向けて言った。


「うん」


泣きじゃくる私に、いつも通りに答える夏樹。


でも夏樹のとった行動は、嘘をつくときの癖だ。


私はジッと交わらない視線を交えようと、必死に夏樹を見つめて言った。


「嘘。…夏樹の嘘なんか私にはお見通しなんだよ」


お願い。


離れていかないで。


何でもするから。


お願いだから置いていかないで。


どんなに伝えても、きっと伝わりきらない。


私は両手で顔を覆った。


綺麗で愛しくて誰よりも尊い、私の生きる全て。


私の世界。


私の生きる世界。


私の息する世界。


顔を覆ってしまったせいで夏樹の表情はわからない。


いつも通りの夏樹の少し低い声。


「心」


もっと、もっと、ちょうだい。


夏樹のその声が私の名前を呼ぶたびに、私はもっと貪欲になる。


私は止まらない涙を片手で拭きながら、夏樹に手を伸ばした。