「私は絶対、夏樹の栄治を選ぶよ。心臓病の栄治の夏樹は選ばない。私は夏樹だから大切なの。大事なの。好きなの。大好きなの。愛してるの」


恋じゃない、何か。


夏樹への思いは、この世界の言葉では言い表せないよ。


言い表すには、この世界は狭くて小さくて愚かすぎる。


この世界の言葉でもしも言うとするならあれだ。


「夏樹は私の『心友』だよ。私の最高。これ以上なんてない。生涯、私の心友の枠は夏樹だけ」


栄治はフッと笑った。


そして聞き取れないくらい小さな声で言った。


「…そんなの最初から無いくせに」


「え?」


聞き取るにも理解するにも、栄治の声は頼りなくて小さすぎた。