「それからのレコンダムは、知っての通りだ。
奴は戦争に戦争を重ね、民の苦しみに耳を傾けることなく領土を広げることばかり考えている。誰かが奴を討ち取らねばならないんだ…師匠の仇を討つためにも。
約二か月後、この国は狩猟祭という祭りで沸き返る。奴が王都から出てきて、姿をさらすんだ。その時、今度こそ奴を討つつもりだ」

「…………」

シルフェは言葉を失っていた。

何をどう言っていいのか、慰めるべきか泣くべきかもわからなかった。

ただ、話を聞いてわかったことがあった。

ボリスは、人を愛せる人間、すなわち信用できる人間だということ。

そう、ボリスは心から愛していたのだ。

「羨ましいな……」

ぽつりと、シルフェの口からこぼれた感想がそれだった。

「羨ましい? この悲惨な話がか?」

ボリスが片眉をあげてシルフェを見る。

少し咎めるような視線だった。