麗雪神話~幻の水辺の告白~

ボリスは広場の大噴水のへりの上に立ち、村での時と同じように堂々と演説をしてみせた。人々は最初不審そうなまなざしだったが、彼の話を聞くにつれ瞳を輝かせ、最後には大喝采を送った。

「俺の名はボリス! ボリスだ! …ありがとう!」

演説は大成功のようだった。

……しかしその時。

広場の人波を割って、鎧を身に着けた男たちがなだれこんできた。

彼らが明らかにボリスを睨みつけて抜刀したので、シルフェはぎょっとした。

「えっ! どういうこと!」

「指名手配犯ボリス!! 貴様を捕まえる!!」

「抵抗するようならその場で殺してもいいと言われている。
覚悟っ!」

(指名手配犯って……ええ~~~っ!!)

ボリスはシルフェの手をとると、涼しい顔で言ってのけた。

「…と、いうわけだ。急いで逃げるぞ」

「え、えええ~~~っ!」

わけもわからぬまま、ボリスと共に人波を分けて広場を抜ける。

兵士たちも追って来た。

シルフェは少し振り返ってみたことを後悔した。追っ手がすごい数だったからだ。

「ボ、ボリス! あなた何をしたの!」

「何って。言っただろう。レコンダムを討つと。
何回か討ち損ねているからな。
それで指名手配。はは」

(はは、じゃないよ! よく考えたら、僕まで一緒に逃げたら僕まで指名手配されるんじゃないの!?)

けれどもう逃げ始めてしまったのだから、後の祭りだ。

だから武器を渡してくれたのだ。

大きな町では、兵士たちにみつかりやすいから。

最初からシルフェも巻き込むつもりだったのだ。