目が覚めた時、サラマスは暗くじめじめとした場所に、両手を拘束されて転がされていた。

視界いっぱいに映るのは、仰々しい鉄格子。

さびかけた鉄の匂いがあたりに充満している。

どうやら牢の中だと思うと、サラマスは舌打ちしたくなった。

(あのまま捕まっちまったってわけか…痛て)

わずかに身じろぎしただけで左胸が痛んだ。

衣服に血がにじんでいる。

(あんの男、情け容赦なく毒矢を胸に打ち込みやがって)

まだ自分が生きていることから察するに、矢は間一髪、心臓には達していなかったのだろう。それがあのプラトーとかいう男の計算だとしたら、すごい腕前である。

神であるサラマスは、人間の姿をしていても、怪我の治癒能力がただの人間より高い。だからか、頭はすっきりとしてきていて、毒も抜け始めているように感じた。

(さて、これからどうするか)

とりあえず、サラマスは両手の戒めの縄を、激しい業火でもって焼き切った。

だが、鉄格子は同じようなわけにはいかないだろう。

業火で曲げられるとしても、かなりの匂いが広がることが予想され、見張りに気付かれないはずがない。

無論、見張りなど簡単に倒せるとは思うが、こんなところで神の力を使って、守るべき人間たちを殺めたくない。

今すぐ自力で脱出するのは、諦めた方がよいだろう。