「そうなんだ…。
じゃあボリスも、皇帝から指名されるためにがんばっているってことだよね」

シルフェがそう返すと、ボリスはふんと鼻を鳴らしてとんでもないことを言った。

「そんなまだるっこしいことしていられるか。
俺様は現皇帝レコンダムを討ち、帝位を手に入れて見せる」

「討ち……って、ええ!?」

あまりに物騒な話だ。

とんでもない男に助けられてしまったのかも知れない…。

「言っておくが、お前を助けたのも、ただの善意などでは決してない。
帝位をいただくという俺様の野望に有効利用するため、助けたまでだ」

「…………」

そんな野望に有効利用されてたまるか。

絶対逃げ出してやる。

シルフェはそう思ったが…。

実はシルフェは自分が倒れた原因について、ひとつだけ思い当たる節があった。

もし予想通りなら、彼のもとから逃げ出すのは大変な苦労となるだろう。

シルフェはそっと、服の袖をまくって自分の腕を確認した。