麗雪神話~幻の水辺の告白~

ここでこの男がシルフェに嘘をつき、毒を飲ませて殺す理由はない。殺したいなら、身動きの取れない今、さっさと殺せばいいからだ。役人に突きだすにせよ、さっさと突き出した方が早い。

つまり、今のところは、この男の言うことを信用しても、問題はないということだろう。

「………」

シルフェは無言で湯呑を受け取り、一気に中身を飲みほした。

良薬口に苦しというが、まさにそれだ。

「苦……!」

甘いもの好きのシルフェにとって、この苦味はもっとも苦手とするものだ。

「…ちょっと、なんか口直しに甘いものないの?」

思わずシルフェがそう要求すると、男は「はあ?」とあからさまに馬鹿にしたような調子で答えた。

「男のくせに甘いものなど食うな」

ぴしゃりと言われ、シルフェの心に怒りにも似た感情が芽生える。

(何その偏見! 超偏見!!)

こいつ嫌いだ、合わない人種だと、シルフェの直感が告げた。

「とりあえず眠れ。じきに熱もさがるから」

「……」

シルフェは何も答えず、そのまま目を閉じた。

(ありがとうなんて、言ってやらないから!)

そんなことを思いながら、押し寄せる眠気に身を任せた。