麗雪神話~幻の水辺の告白~

重い瞼を持ち上げ、必死で喉から声を押し出した。

揺らぐ視界に、見たことのない栗色の髪の男が映る。

男の腕は離れない。シルフェは風の力で無理やり男をひきはがそうとしたが……。

どういうわけか、うまくいかなかった。

(あれ…?)

ちゃんと空気に意思を乗せたのに、風が動いてくれなかった。

シルフェはもう一度、風を使役しようとする。

しかし何度やっても同じだった。

(ど、どういうこと…? 風の力が、使えない…?)

さあっと血の気が引いていく。

風の力が使えないということは、今の自分はただの非力な少年ということではないか。

「どうした? お前、ひどい熱じゃないか。
…よし決めた、お前にする」

男の声がどんどん意識から遠のいていく。

逃げなければと思うのに、意識はどんどん霞がかっていく。

(サラマス……)

そう愛しい人の名を思い浮かべたのを最後に、シルフェは意識を手放した。