それがいけなかったのだろう。

何かあると見た男が合図すると、背後からぞろぞろと兵たちが集まってきた。

「フードをとって顔を見せろ」

運の悪いことに、この時この国特有のスコールが降り始めた。

雨は、プミラの体の染め粉をどんどん洗い流してしまい、プミラの体が本来の純白の体に戻っていってしまう。

「白プミール!?
北の地にしかいないプミールじゃないか。お前たち、まさか…!」

(まずい……!!)

セレイアはプミラに飛び乗った。

「ディセル、急いで後ろに乗って!」

その台詞をすべて聞かずともわかってくれているようで、ディセルがすぐさまセレイアの後ろに飛び乗る。

プミラが翼を広げた。

風が巻き起こり、二人のフードをぱらりと落とす。

二人の風貌を見た兵たちが、驚愕の声を上げた。

「やはり、明らかにお前たち、旅人だな!? いったいどこから紛れ込んだ! 王都侵入罪は死罪だぞ!」

兵の声を背後に聞きながら、セレイアたちは上昇した。

兵たちの中にはこの国のまだらプミールを操る者もいるようで、空に逃れたからとて安全とは言えなかった。

「どうするセレイア! このまま拠点に帰ったら、居場所を知らせるようなものだ!」

「…わかってる! もうっ、サラマスを助けたりシルフェを捜したり、レインスだってみつけたいっていうのに…!」

セレイアはプミラの背に体を倒して風の抵抗を少なくしながら、速度を上げる。

「いったん王都から出るわ! まだらプミール、振り切るわよ! ディセルも前かがみになって! 落ちないでね!」

「わかった!」

サラマスを救う。シルフェを捜す。レインスを捜す。

何一つままならないまま、二人は激しく叩きつける雨の中、王都を出ざるを得なかったのだった。