ふわりと、なんの音もなく、三人はバルコニーへと着地する。

思っていたより広いバルコニーだ。

見はるかすジャングルの景色に溶け込むように、たくさんの植物が植えられている。

部屋へと続くガラス張りのドアは当然、閉まっていた。

念のため引こうとしてみるが、やはり鍵もきちんと閉まっている。

…となれば。

「危ないから、二人は下がってて」

ディセルが前に進み出た。

彼が腕を突きだすと、みるみるうちに周囲には冷気が漂い、ピキピキ、と音を立ててガラスドアが凍っていく。

完全に凍りつき、脆くなったドアを、ディセルはどん、と軽く叩いた。

ぱりん、と小さな音を立てて、ドアの一部が砕け散った。

あとは空いた穴から手を伸ばし、鍵を開けるだけだ。

鍵を外すと、ディセルはそっとドアを引き、部屋への道を開いた。

突然の外気に、震えるようになびくカーテンは、金色だ。

三人は気配を殺して中に忍び込むと、じっくりと室内を観察した。

珍しい木製のシャンデリアには、きらきらと輝くダイヤモンドの飾り。

家具調度はつややかな黒檀で統一されている。あちこちに金色が取り入れられ、宝石を用いた色とりどりの豪奢な装飾が目を引く。そのほか、部屋中に―それこそ床や壁にも散りばめられた、赤い花が目を引いた。宿でも見た花だった。

家一軒分はありそうな広い室内には、黒い紗幕の中、キングサイズのベッドがしつらえられていた。

王の寝室といっても遜色のない部屋だ。

この部屋の主は、果たして皇帝で合っているだろうか。