「あれが、天上界への扉、なのね………」

それはセレイアの想像をはるかにこえる、美しい、そして荘厳な扉だった。

乳白色の色合いは、地上にはない輝きを持っている。たとえるなら最高級の真珠…だろうか。いや、そんなものでは言い表せないだろう。

状況を忘れて、しばしぼーっと見入る。

隣のディセルも同じようだった。

ヴェインや皇帝が続々と扉の中へと入って行ってしまう光景にさえも、呆然と見入ってしまう。

そしてある瞬間、我に返った。

そして隣に佇むディセルを見上げ、立ちすくんだ。

体中の血が下がっていくような心地になる。

(これで、サヨナラなんだわ)

もう二度と、会うことはない。

二度と………。

何か、言わなければと思った。

それなのに、言葉は喉につかえて、何も出て来てくれない。

そのかわりに、瞳から涙が勝手にあふれだす。

さよならと、言わなければならない。

今までありがとうと、元気でと、言わなければ。