当然のことながら、王は王都エイフォートにいる。だから王に接触するには、王都に潜入しなければならない。けれど、旅人の王都入りは、許されていない。

つまり、何らかの方法で、関所破りをしなければならないということがわかっている。もしみつかれば、全員立派なお尋ね者だ。ことは慎重を期した。

「まずはエイフォートのすぐそばの隣町まで行こう。そして僕が風の力で空を飛んで、こっそり王都に侵入してみる。潜入後、全員で身を潜められそうな拠点となる場所をさがしてくるよ。全員で潜入するのは、それからだ」

シルフェの力を存分にいかした作戦が決まると、四人は迅速に行動した。

辿り着いた翌朝にはもう関所街ラパスを出て、街道沿いに南下し、王都エイフォートを目指す。

途中馬車も利用したので、ほんの数日で目的地であるエイフォートの隣町にたどり着いた。

宿をとり、再度作戦を確認して。

深夜、シルフェが一人先に関所破りに向かうのを、セレイアたちは緊張の面持ちで見送った。

「…シルフェの奴、ほんとに大丈夫か」

サラマスの、もう何度目かわからぬ台詞に、セレイアは思わず頬が緩む。

シルフェが出かけてから、彼はいっこうに落ち着かず、宿の室内であっちに行ったりこっちに行ったりを繰り返しているのだ。

「そんなに心配?」

セレイアがにやにやしながら問いかけると、サラマスは「ばかやろう」と頬を染めた。

「誰があんな奴心配するか。
ただ、のほほんとしたやつだから、ヘマをやらかすんじゃねぇかって、思ってるだけで…」

こういう時、サラマスの方もシルフェにまんざらでもないのかもしれないと思う。

「サラマス、シルフェを信じて、今は待とう。彼なら大丈夫」

ディセルの穏やかな声をうけて、サラマスはやっとベッドの上に腰を落ち着けた。