“狩猟祭”が始まった。

“狩猟祭”とは本来、国花でもある幻の花アプロマイトを“狩る”祭りである。

一週間かけて、国中を挙げて森に分け入り、アプロマイトを探すのだ。

森に住む動物たちを狩るのはあくまで余興。

しかし幻の花はそうそう見つからぬゆえ、しだいに余興そのものが祭りとなり、今のような動物を狩る狩猟祭となったと言う。

ボリスはこの機にレコンダムを討つべく、情報を集め、策を練り、奔走していた。

シルフェは、ボリスを手伝いながら、狩猟祭の行われている森に近い隠れ家のひとつで過ごしていた。

風の力は戻り、セレイアたちとも合流できる算段が付き、サラマスからの手紙の返事も来た。これ以上、ボリスのそばに留まる理由はない。

別れを、告げなければならないのに、それができずに、シルフェはボリスと真剣な話をするのをどことなく避けてしまっている。

ボリスにもそれがわかっているのかもしれない。彼の方も、シルフェを避けているように思えた。もしかしたら、先日の彼の告白を、遮ってしまったからかも知れないけれど。

(私たちは離れた方がいい)

シルフェは強くそう思っていた。

神と人の間に…強すぎる想いは危険だと思うのだ。

スノーティアスとセレイアを見ていてもわかる。

二人を待つのは、どうあがいても…別れなのだ。