麗雪神話~幻の水辺の告白~

「ぼーっとするな。俺様がいいところに連れて行ってやるから、ちょっと来い」

言うなり彼はシルフェの手をとって、ずんずんと歩き出した。

この強引さにも、もう慣れた。

シルフェは大人しく、腕を引かれるまま歩いた。

ボリスがシルフェを強引に連れて行った場所。

そこには。

「わあ……きれい」

シルフェが思わずそう呟くほどの景色が広がっていた。

一面の、黄色の花畑だ。

風を受け黄色が順に波打つさまは、まるで海のようだ。

広さ自体は大したものではないが、十分に目を引く光景だった。

孤児院の近くに、こんな場所があったとは。

シルフェは屈み込み、花に鼻を寄せる。

ほんのりと甘い香りが鼻腔をくすぐった。

「なんていう花?」

シルフェが訊ねると、

「…黄爪草」

ボリスはぶっきらぼうに、短く答えた。

それきり何も言わない。

ざあっと、風が吹き抜けていく。

「とってもきれい。ありがとう、連れて来てくれて。秘密の場所だったんじゃないの?」

やはりボリスは何も言わなかった。