「お前たち、元気にしていたか」

その場所に着くなりボリスが発したその声が、いつもの偉そうな口調とはまるで違って、はかりしれない優しい響きを持っていたので、シルフェはちょっと驚いた。

こんな声も出せるのだと、少し見直す。

彼のその声を聞くなり、わらわらと子供たちが彼に群がってきた。

「ボリスお兄ちゃん!」

「ボリスお兄ちゃん、久しぶり!」

「今日も遊んでくれるの?」

どんなに身なりは質素でも、子供の笑顔と言うものは万国共通、溌剌とした元気を周囲にまきちらしてくれる。その力は、ボリスの背後に佇んでいたシルフェの頬を思わず緩ませた。

―ここはボリスが育った、粗末な孤児院。

ボリスはたまにここに顔を出し、子供たちの面倒を見ているのだという。

「ああ、今日は一日お前たちと一緒だ。何をして遊ぼうか?」

(ふふ、まるで子煩悩な父親みたい)

シルフェがほほえましく見守っていると、子供たちがシルフェに気が付いた。

「わあ……綺麗な人………」

「こんなにきれいなひと、みたことない」

「このお姉ちゃん、誰? ボリスお兄ちゃんのお嫁さん?」

説明しようと口を開きかけていたボリスが、嫁の一言にぱっと赤面した。

「ばっ……何を言っている!」

「そうよ、全然違うわ」

シルフェがはっきり否定すると、今度はボリスがあからさまに不機嫌そうな顔になった。

「…ふん」

と鼻など鳴らしている。