麗雪神話~幻の水辺の告白~

すぐにぱらぱらと音を立てて、たくさんの水滴が空から降ってくる。

「―――雨」

ディセルが呟いて空を見上げた。

この地方では珍しい、雨だ。

このままでは二人とも濡れてしまう。

けれど二人はその場を動くことができない。石のように固まって、何か魔法の言葉が二人の体を融かしてくれるのを、待っている。

そんなもの、ないのかもしれなくても。

石と化した二人を救ったのは、不意にかけられた能天気な声だった。

「やあ、おふたりとも。
元気そうで何より」

聞き覚えのある声だった。

その声で、二人の体は時を取り戻す。

二人は振り向き、同時に叫んだ。

「レインス!!」

そう、またしても神出鬼没に現れたのは、雨の神でディセルの弟だという、吟遊詩人のレインスだった。

この雨は、彼が降らしたものだったのだろう。

なるほど雨を受けて微笑み佇む彼の姿は、やはり神。水色の髪や瞳が雨そのものといっていいほど良くこの雨と似合っていて、はかりしれない風情がある。

「レインス、捜したのよ!」

「俺たち、あなたに頼みたいことがあるんだ。それももうあまり時間がない」

「だろうね。でも、その前に―――」

にやりと、レインスがいたずらっぽく笑った。

「そろそろその手、放したら? …お熱いことで」

「…!!!」