食事をとっていても、街を歩いていても、何をしていても、セレイアは上の空だった。

心を占めるのは、幻のようなあの時間。

ジャングルの奥、冷たい水の中で、感じたディセルの体温。

そして、苦しそうに紡がれた想い―告白。

愛していると、彼は言った。

その真摯な瞳はそれが嘘でも冗談でもないと、雄弁に物語っていた。

(トリステアにいた頃からだってディセルは言ってた……)

まったく、気が付かなかった。

空中庭園王国サティエイトで、口づけされた時も、まさか彼が自分を愛しているとは思ってもみなかった。

(どうしよう…)

どうしようも何も、自分はあの日彼を拒絶した。

だからすべてはもう、終わったこと。

そう、終わったのだ。

それなのに、セレイアはまた深い物思いに沈む。

堂々巡り、答えの出ない物思いに。

「セレイア。どうやらサラマスは、皇帝の下について働いているらしい。皇帝が炎の神を従えたと噂になっていたよ。よかった…処刑されたわけじゃなかったんだね。サラマスのことだ、きっと潜入捜査をしてくれているんだろう」

「……………そうね」

ディセルが話しかけても、セレイアは本当に、上の空だった。

「あとはシルフェの行方がわかればいいんだけど…」

「…………そうね」

「………………」