「おお、そなたが会うのははじめてであったな。
ヴェイン、こちらはそなたと同じ神、サラマスと言う炎の神だ。今は私の下で働いてくれている。
サラマス、こちらはヴェイン。霧で我々に力を貸してくれている。
二人とも、仲良くせよ」

「は」

「…はい」

嘘八百の返事をしてからヴェインを見ると、ばっちり目が合ってしまった。

サラマスは無意識にごくりと唾を飲みこむ。

それはヴェインの表情が、恐ろしいほどの冷たさをはらんでいたからだ。

むろん、表面上は微笑んでいる。だから横にいた皇帝にはその冷たさがわからないであろう。けれどその微笑みはうすら寒いもので、内面には強い殺気が隠れていると―正面から相対したサラマスにはわかったのだ。

「酒を用意させよう。戦勝祝いだ。これでマラスも私の領土。いやはや、地上の陣取りゲームは楽しいな」

(………何が陣取りゲームだ。ふざけるな)

そんな道楽のために、これだけの人の命が消えているのだと思うと、サラマスの胸に怒りが沸き起こった。

けれどそれを表面に出すのは愚か者のすること。サラマスは大人しくヴェインと共に幕舎の敷布の上に腰を下ろした。

皇帝がプラトーを呼びに出て行ったので、サラマスはここぞとばかりにヴェインに言葉をぶつけた。