ヴェインは皇帝のそばにサラマスの姿を見つけても、特段驚きを見せなかった。

なぜこんなところにサラマスがいるのかと、驚いても良い場面のはずなのに。

むしろその瞳に一瞬喜悦のような表情が浮かんだように見えたのは、気のせいだろうか。

彼には何もかもお見通しなのではないかと、そんな不安がちらりとサラマスの脳裏をよぎる。

「おお、ヴェインよ。よくやってくれた。これで攻める手間がはぶけた」

レコンダムが両手を広げてヴェインを迎え入れた。

「ご機嫌麗しゅう、レコンダム皇帝陛下」

ヴェインは皇帝相手にも全く気後れせずに悠然と微笑むと、ひざを折って挨拶をした。

その所作は流れるように美しい。

一体どこでそんな教育を受けたのかと、疑問に思ってしまう。以前から敬うべき相手―すなわち主―を持つのが当たり前の生活をしていたのかもしれない。

「我々の念願叶う日も近いな」

皇帝はご満悦と言った表情でそう言った。

「陛下の望み、必ずや叶えて御覧に入れます」

(…念願…?)

サラマスは全神経を集中して会話に耳を澄ます。